第10回受賞作品

第9回再築大賞受賞発表が一般社団法人全国古民家再生協会 全国会員大会内で執り行われました。
受賞作品は以下の通りです。

設計:越前良太デザイン研究所  [建設地:大阪府和泉市]
浦田の家 改修工事

先祖代々に住み継がれてきた古民家を、若夫婦家族が現代に合う暮らしができるリノベーションをおこなう依頼を受けた。長い時間をかけて一族が住み続けられてきた、愛着が溢れた住み慣れた古民家には、居場所や物に想いが内包し記憶となって家族に住み継がれている。そのような掛け替えのない古民家を住み継ぐ為に、過去・現在・未来の想いの関係性を再構成して、家族がより長くこの場所で過ごすことが出来るリノベーションを目指した。

このリノベーションでは、古民家の過去から続く内容を継承しつつ、現代に合わせた新しい価値を創造することによって、家族がより長くこの場所で過ごすことができるようになるように設計した。過去にはなく新しく創り出された部分。過去の評価されていなかった内容やリメイクによって再定義された内容を再生し、新しい価値に変えた部分。過去から続く内容をそのまま利用することとした部分。それぞれのエレメントを再構成することで、過去・現在・未来の想いを結びつける境界点を設計することで、家族がより長くこの場所で過ごせ、愛され親しみのある古民家を目指した。

《受賞理由》
古民家特有の大梁や建具など可能な限り再利用し古民家の雰囲気を活かしながら、現代風のリノベーションを加えることで家族が永く住み継いでいけるよう配慮されている。「過去・現在・未来」を「創る・再生・継続」と表現した設計コンセプトも素晴らしい。家族がより一層愛着を持てる家になったのではないだろうか。

施工:靖建築事務所有限会社  [建設地:埼玉県川口市]
先祖代々から引き継いだものを鏤めたモダンな家

築150年の先祖代々から引き継いだ家の大黒柱や梁、床板、欄間、板戸、框などを修復して再利用できるものは余すところなく使い、新たな息吹を吹き込み家中のいたるところに鏤めました。また書院や神棚、仏壇なども多少手をいれましたが、長い年月を旧家と過ごしたそのままの姿で新しい家に溶け込んでいます。また木材に限らず門に使っていた大谷石は玄関の柱や壁に装飾を加えて存在感を表し、たくさんの屋根瓦も、木が鬱蒼と茂っていて雨樋を設けてもすぐ詰まってしまうので、砂利敷きの土留として家の周りをぐるりとかこんでいます。もちろん新しく作った井戸屋形の屋根にも再利用をしています。
新しいものの融合としては、リビングルームにモダンな鉄骨階段を設け、折り上げ天井には間接照明を配置しました。廊下に面する扉は黒のアルミフレームのガラスドアを採用し、ヴェネチアンガラスを間仕切り壁に嵌め込んだりと、和と洋 古いものと新しいものとを融合させた家となりました。

《受賞理由》
ご先祖から引き継がれた家の大黒柱や梁等をふんだんにリユースされている点が非常に評価でき、また新しいものとの融合も評価する点であった。木材だけでなく、瓦や石なども再利用し、環境面への貢献も大きいと判断した。
環境に配慮した住宅としてのモデル性も高く、今後、古材リユースの魅力を拡大させていくのにふさわしい作品であったことが非常に高く評価された作品であった。

施工:良和建設  [建設地:佐賀県佐賀市]
里山で御両親の思いを孫達へ繋ぐ

《受賞理由》
築150年実家の古民家再築
現在の瓦、床材、屋久杉の天井なの価値のあるものを再利用し生かしたつくりになっている。
また柱の使い方など技術に関しても気を使ったつくりになっており関心する次第である。古材の再利用も考えられており技術の高さがうかがえる技術屋としても心のこもった仕上げになっている。

昭和40年頃に建てられたお茶室の待合室の天井板に屋久杉を使用してあり、新築玄関の天井板として再利用しました。構造は木造軸組の内部真壁、木の温かみを感じれる部屋にしました。
外部の付柱と付梁には、杉を特別に製材した化粧板を使用し木肌が見える防腐剤を塗布しました。外部大壁だけど漆喰風とし、建築場所が山中なので、壁の中の断熱材も高性能な物にしてます。
お茶室棟のお茶室(4.5畳)は、そのまま移築をして新築母屋建物に繋げられるように施工。再利用材を使用するにあたり、照明用の穴が、新規の照明の配線出し口になるように、張る位置にもこだわり、また材料が寸足らずや部屋の途中で新材とならないように、新築建物の間取りにも気を付けながら、実施設計を行いました。
真壁の部屋から見える柱は、柾目になるように努力して加工してます。本来木の南側を南に向けて使用するのが、基本とは思いますが施主には長く部屋面の柱が、主に見えるので、そちらを主に考えて施工しました。
構造材に古材を使用したくない(耐震性に不安)と言われたので、当初は普通の平屋の切妻屋根でしたが、北側半分を高くして台所と隣の洋室を高天井にし、高い位置に古材を渡して、意匠梁と古材も再利用し、洗面所、風呂、洋室の上に小屋裏部屋が出来て、保護猫を飼ってあり、御夫婦共に床に物を置くのを嫌われてるので、倉庫代わりの部屋もできました。

施工:守屋八潮建設株式会社  [建設地:埼玉県秩父市]
秩父番場町プロジェクト~昭和レトロな街並みの古民家再生プロジェクト

外観の魅力を引き出すために、秩父神社の参道としての位置付け、看板建築の外観要素となる2階部分はそのまま活用しました。1階部分には新しさを加えながら参道に面した玄関の広い間口を活かし、開放的で入りやすい外観としました。
内部機能面では耐震・遮音に配慮しながら築154年の既存の古民家の魅力を活かした空間提案を行い、それぞれの部屋の個性を表す「蔵」・「庭」・「小屋組」という客室名としています。施設利用者が自由気ままに過ごせるよう、そして施設運営者が人手をなるべくかけなくできるようセルフサービスを主題とした宿づくりを目指しました。セルフチェックイン、セルフサービスカウンター、セルフ布団敷用の収納などを採用し、使いやすさやと分かりやすさに配慮した提案としました。

設計監理:株式会社佛庄総本店一級建築士事務所  [三重県鈴鹿市]
古きものに次世代の付加価値を

地方都市における空き家の店舗化活用モデル提案

相続した空き家を整理していく過程で当社(仏壇店)にご依頼いただくことの多い“仏壇じまい”。空き家を整理していくには、仏壇だけでなく、不動産や建築、遺品整理、登記、相続など様々な各方面のプロに依頼しなければ整理していく事が困難です。そのようなお困りごとをワンストップで解決する窓口として、“空き家の総合相談窓口「築古stock(ちくふるストック)」”を三重県鈴鹿市に2023年4月14日オープンしました。空き家であった築80年の古民家をリノベーションした相談窓口です。店内には、古着・古本・雑貨を扱う「古着屋」と「間貸しキッチン」も併設しています。
店内には、現代のライフスタイルに合わせ、インテリアに組み込んだ“造り付け仏壇”の供養提案も行っています。実家にある大型の仏壇を処分した後、手元に残された“仏像や位牌の安置先”としてのモダン仏壇です。旧・床の間の一角に格子状の棚を製作し、モデル展示を行いました。造り付け仏壇の内装モデル提案は三重県初の取り組みとなります。

施工:大五郎建設有限会社  [千葉県南房総市]
房総半島台風被害からの復興

令和元年房総半島台風で32年間住んだ住宅が台風被害に遭い解体を余儀なくされ新築した住宅。
元禄5年(1692年)創業300年以上の脈々と受け継がれきた技術、伝統軸組工法と最新技術NASAでも使われている断熱材を住宅用に改良された断熱材アプリを使い高気密・高断熱に耐震等級3を取り、躯体に至っては、地元千葉県産の木を100%使用し、建物全体では、90%使用し地産地消でSDG’sを意識しました。木の温かみを最大限に活用したこだわりの木造住宅です。
周りを田畑や山に囲まれた素晴らしいロケーションにあったシンプルな外観。 見た目はシンプルな造りですが、漆喰をふんだんに使った壁と木のコントラストで統一された室内を見れば費用と手間をかけたのがすぐ判る、 長期優良住宅認定を受けたこの家は認定の通り「次世代へ繋ぐ木造住宅=長持ちする家」です。20年、30年でボロボロになる多くの住宅とは一線を画します。