
- 所在地
- 富山県砺波市
- 施工
- 株式会社クロダハウス
- 築年数
- 148年
- 構造・規模
- 木造伝統工法・2階建て
- 延床面積
- 261.02㎡
- 竣工
- 2024年8月
築148年の伝統構法の古民家を、既存の骨組みを最大限に活かす「ストック活用」を軸に再築しました。新築に比べて解体廃棄物と建設時のCO₂排出量を大幅に抑えるとともに、パッシブデザインを取り入れ、次世代へ資産として引き継げる「ロングライフ住宅」を目指しています。
断熱は、高性能な充填断熱と木製サッシで大幅に向上。UA値は改修前の3.64W/㎡・Kから0.41W/㎡・Kへ(約8.88倍の向上)と改善し、断熱等級5の地域で等級6を実現しました。耐震面でも、上部構造評点を改修前0.14から1.0相当へ高めています。伝統構法特有の「柔構造」の良さを活かしながら、耐力壁のバランスの良い配置とベタ基礎の新設で、安全性を確保しました。
解体時に出た古梁や建具は洗浄・補修して再利用し、漆喰や無垢材といった自然素材、地域の木材を適材適所に取り入れています。デザインでは、時を経た力強い梁や柱の温もりに、北欧の空間思想である「光の演出」と「余白の美」を融合。伝統的な格子や和紙の繊細な質感と調和させ、住むほどに愛着が深まる住まいに仕上げました。
- 所在地
- 神奈川県横浜市
- 設計
- 有限会社ササキ設計
- 施工
- 株式会社カネカ
- 築年数
- 120年程度
- 構造・規模
- 木造・2階建て
- 延床面積
- 209.19㎡
- 竣工
- 2024年11月
山形県天童市で解体される予定だった、築120年ほどの3階建て座敷蔵。豪快な小屋裏の太い梁組みや板絵に魅せられた施主が、この蔵を横浜に移築し、ギャラリーのある住まいとして再生することを決断しました。
予算を踏まえて大幅に減築し、3階の床をなくして2階上部を吹抜けに。7間通しの棟木や小屋梁を現しとし、2階をリビング・ダイニング・キッチン・寝室のゾーンとしました。蔵座敷だった1階は和室と板の間のギャラリー兼用スペースとして竿縁天井を再生し、立派な蔵戸は位置を変えて玄関ホールに再現しています。
施工は、山形県金山町を拠点とする株式会社カネカと棟梁たちが、番付け解体から保管、運搬、横浜での基礎工事・建て方までを担当。屋根外壁、電気設備、左官、建具などは地元横浜の工務店とリレー方式で進めました。構造材を廃棄せず再利用することで解体廃棄や新規木材の伐採・製材・輸送に伴うCO₂排出を大幅に削減し、古材・古民家を扱える職人の育成にも寄与しています。
在来工法のベタ基礎・耐力面材・金物などを組み合わせたハイブリッドな構法で耐震性を確保しつつ、コストと工期も抑制。EVシャフトなど維持管理の必要性が高い設備は蔵の外側に付加して構造と分離し、点検口も適切に配置しています。
- 所在地
- 鹿児島県鹿児島市桜島
- 施工
- 株式会社建築工房workspace
- 築年数
- 築47年(昭和54年築)
- 構造・規模
- 木造・平屋建て
- 延床面積
- 116.44㎡
- 竣工
- 2026年5月
昭和54年築の既存の梁や柱をそのまま再利用し、資材の新規製造や解体・廃棄時に発生するCO₂排出量を大きく削減。漆喰や杉板など、国産の自然素材を内部仕上げに多用しました。「壊しては建てる」のではなく、今ある建築資産に付加価値を与えて長寿命化させる、これからの建築のあり方を示しています。
間仕切りの変更で不足する梁は、建物の雰囲気を壊さない古材の梁を適材適所に補い、接合部や弱点を的確に補強することで、古民家特有の意匠を損なわずに耐震性を確保しました。
デザインは、桜島の隠れ里のような集落が持つ「静寂」との調和がテーマ。リビングと廊下の天井をなくして既存の梁と新しい古材の梁を空間の主役とし、職人の手作業で陰影をつけた漆喰と杉板の質感のコントラストで、上質な空間をつくりました。新設のプライベートサウナは宿の世界観に溶け込む一体型のデザインで、サウナ室の窓や水風呂・外気浴スペースからは、静かな港の風景と雄大な桜島を望めます。
不特定多数のゲストが利用する水回りの床には、清掃や消毒が容易なフロアタイルを採用。自然素材の繊細な風合いを守りながら、毎日の客室清掃を効率化し、長く清潔感を保てる工夫をしています。
- 所在地
- 福岡県筑後市
- 施工
- 井上建築
- 構造・規模
- 木造・平屋建て
- 延床面積
- 105.79㎡
- 使用古材
- 3.3759㎥
- 竣工
- 2026年5月
家づくりは、お施主様自らが住育学校に通い、持続可能な循環型建築を学ぶところから始まりました。「住まい手が理解して選び、暮らしを実践する家」でありたいという思いが、すべての出発点です。
構造には、地域産の自然乾燥材を新材として採用。古材とこれから共に年月を重ねていく材だからこそ、木の呼吸が合うものを選び抜きました。自然乾燥材の特性を熟知した職人が手刻みで、昔ながらの貫工法と込栓による木組みを実現。金物にできるだけ頼らず、揺れに対して戻ろうとする木組みの「総持ち」の力を発揮させる、失われつつある伝統技術です。今では珍しくなった土壁も、この家の核として仕上げました。
意匠には、お施主様が細部までこだわったアンティーク調のデザインを採用。ステンドグラスの建具など、暮らすほどに愛着が増す仕掛けが随所にあります。平屋ながら小屋組をあえて化粧とし、古材23本の木目を生かしました。化学塗料ではなく自然塗料を使うことで、住まい手自身も気軽にメンテナンスできます。
上棟の折には、この土地に長く根付いてほしいという願いを込めて、昔ながらの餅まきを実施。近隣の方やお子さんたちが集まる姿は、この家が地域に開かれた存在として歩み始めた証です。これからまた100年、この新材たちが古材になる頃を見据えて、歴史を紡いでいきます。
- 所在地
- 福島県郡山市
- 施工
- 平成工務店株式会社
- 築年数
- 50年(解体した住宅)
- 構造・規模
- 木造・平屋建て
- 延床面積
- 78.07㎡
- 竣工
- 2024年10月
築50年の木造住宅を解体し、その一部を再利用して建てた住まいです。再利用した部材は、新材にはない趣や重厚感を醸し出しています。
施工者は、循環型建築とは部材を再利用するだけでなく、そこに住む人の思い出までも循環していくことが最も大切だと考えました。象徴となったのが、50年暮らした家への思い入れが強かった床柱です。本来は床の間に使うのが建築の常識ですが、あえて玄関から居間へ入る一番目立つ場所に化粧柱として再利用しました。
思い出の詰まった柱とともに、これからの暮らしを重ねていく。古材がつなぐ、人と家の物語です。
- 所在地
- 千葉県君津市
- 施工
- 大五郎建設有限会社
- 築年数
- 120年
- 構造・規模
- 伝統構法・1階
- 延床面積
- 54.66㎡
- 竣工
- 2025年11月
築120年の納屋を解体することなく、曳家工法で一度移設。新たな基礎をつくったうえで元の位置へ曳き戻して再築しました。長年物置として使われていた納屋は、施主ご家族が長年思い描いてきた「個人図書館」へと生まれ変わっています。
既存建物を活かすことで、解体廃棄物の発生や新たな建築資材の使用を大幅に抑え、建物に蓄積された炭素(エンボディドカーボン)を保持。梁・柱・建具などの既存部材を可能な限り再利用し、宮大工の伝統技術と外断熱を組み合わせることで、環境負荷の低減と歴史的建築資産の継承を両立しました。外断熱は、構造材を温度変化や結露から守り、建物の長寿命化にもつながります。
空間の主役は、120年の歳月を刻んだ重厚な木組みと梁組。フランス出身のご主人と日本人の奥様の暮らしを反映し、日本の伝統建築の繊細な美しさと、フランスのライブラリー文化に通じる居心地のよさを融合させました。「壊して建てる」から「活かして未来へつなぐ」へ。家族の夢を叶えながら、建築に宿る時間と技、記憶を未来に受け継ぐ再築です。
- 所在地
- 茨城県古河市
- 施工
- 森田建設工業株式会社
- 築年数
- およそ160年
- 構造・規模
- 木造・平屋(一部2階建て)
- 延床面積
- 266.23㎡
- 竣工
- 2023年9月
3万坪の森に囲まれた、築150年以上の古民家。空き家となっていた旧山川邸を、地域のために活かしたいという相談をきっかけに「古民家再生総合調査」を実施したところ、構造体の状態が良好と診断されたため、解体せずに再築しました。「暮らすように泊まる森の中の古民家」をコンセプトに、一棟貸しの宿泊施設として生まれ変わっています。
耐震性は制震ダンパーの設置などで高め、雨漏りに悩まされていた瓦屋根は軽量な鋼板屋根に改修。建物を残したことで、ブナの木およそ5,400本分に相当するCO₂の削減につながりました。かつて養蚕を営んだ二階建ての母屋は、外壁の板張りを一枚ずつ整え直して再生。土壁や漆喰の仕上げを受け継ぎ、玄関座敷・広間・奥座敷と続く六部屋五十二畳の座敷も、150年前の面影のまま残しました。
土間には釜戸が復活し、敷地内の森の間伐材を薪に、竹林の間伐材を竹垣にと、環境と一体になった循環型の維持管理を実践。母屋の厨房では地元の蕎麦職人が手打ち蕎麦店を営み、畑の収穫体験やお花見、マルシェなども開催して、地域の人たちと共に育てる古民家を目指しています。海外からのお客様に向けた英語・中国語の案内板も設置しました。
- 所在地
- 大分県国東市
- 施工
- 株式会社Linewood
- 築年数
- 推定80年
- 構造・規模
- 木造伝統工法・1階
- 延床面積
- 39.43㎡
- 竣工
- 2025年12月
古民家に付属する納屋を解体せず、飲食施設「かなめのごはん」として再生しました。柱や梁、屋根など使える部分を最大限に活用して、新築時の資材製造・運搬・廃棄に伴うCO₂を削減。国東の旬の野菜や農産物を積極的に使う地産地消も取り入れ、建築と食の両面から脱炭素型の地域づくりを提案しています。
改修時に取り壊した土壁は廃棄せず、土壁の材料として再利用。再生の過程では、地域の子どもたちと一緒に土を練って壁を塗る「土壁ワークショップ」を開き、伝統的な建築技術や自然素材に触れる機会をつくりました。古い建物から生まれた材料を再びその建物に戻し、資源と人の関わり、地域文化が循環します。
デザインでは古民家本来の素材感を生かし、新たに設ける壁には自然素材のペイントを使用。和の趣を基調に、洋のアンティークの雰囲気も取り入れ、新旧が互いを引き立てる空間にしました。テーブルには、約150年前の古民家の廊下材を再生利用しています。
「古いものを大切に、未来へつなぐ。人と建物と地域がめぐる場所。」床や避難経路、設備配置にも配慮し、飲食施設として安心して過ごせる安全性も両立しました。
